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2010年12月28日火曜日

冬の正座

八海さんからは、とにかく右足だったら右足から殺せ・・・そんで、我慢できなくなったら残った左足を殺す、というふうに1本ずつ殺していけば・・・何とかもつ。
・・・・・物騒な話ではない。正座の話。

落研の合宿には、だいたい2本ぐらいのネタおろしの噺を憶えて持っていった。
だいたい、合宿の午前中は、朝食食べて、発声練習に海岸まで走って・・・・

食事といえば、先輩の給仕は、対面に座った後輩がするもんだった・・先輩がご飯1っ杯目を食べ終わるには、正座に座りなおして待つ、茶碗は両手で受け取る、ご飯は、しゃもじで2回に分けてよそってあげる・・・・なんてなことは、合宿で先輩から教わったんだよなぁ。

で、午後と夕食後に、発表会形式の高座が待ってる。
これが、私の1年のときは、まだ七代目の橘家円蔵師匠が技術顧問の時代のなごりが残ってたんで、きつい、きつい・・・もっとも、これは伝助さんやもっと以前の先輩方のほうが、すごいエピソードは、お持ちなんでしょうが・・・・・

発表会形式の正座の件、・・・前座というか開口一番というか最初の人が高座で噺を始めてから下で聞いてる方は、ずーっと正座。それから3人、4人とあがってしゃべってる間もずーっと正座。
真打が上がって、・・・「お平らに!」・・・と足をくずしていいよ!という指示が出るまで、正座。・・・・・・・これは、きつい!・・きつかったですよねぇ・・・・(また、始まった。誰に同意もとめてるんだか・・)

しかも、合宿は4日、5日と続くわけで、4日、5日目ぐらいになると、正座でもって足はパンパンになってるから・・・・これで、冒頭の八海さんのテクニック、足は片方ずつ殺せ!になるわけです。

そして、伝助さん時代の有名なあの事件。
題して・・・・・「円蔵師匠が合宿に来て、部員が持ってきていたサロメチール軟膏を歯磨き粉と間違えて歯を磨いちゃった事件」・・・(題してないや、そのままじゃないか!)
これも、正座のつらさを解消するために、持ってきたものなんでしょう?

だから、覚えたてのネタを高座で忘れて絶句してるときの演者と、下で聞いてる足が痛くて、疲れて眠くてしかたない連中のにらみ合いは、すごいことになる。

聞いてるみんなは、足が痛いから太ももに置いた手を足に食い込ませ・・・
足への負担を少しでも減らすように腰を浮かせて、前傾姿勢をとって脂汗をにじませながら・・・・「早く・・・早く続きをしゃべって、噺を終わらせて下さいよー!足が痛てぇー!」という強烈な視線を一身に受けながら・・・忘れた噺を思い出そうと、あせる演者が、これまた前傾姿勢でにらみ合う。すさまじい、光景。・・・もう、落語を演じる、観る感じではないっすね。縄張り争いをしてにらみ合う野良猫の一群みたいです。客席で「フゥー!」・・・高座で「フゥー!」・・一触即発。

でも、30年たっても笑える思い出。・・・ああいうものは苦しければ苦しいほど思い出になるんだろうなぁ・・やってる最中は、あんなに、くたくたになってたのに。

冬の正座・・・私の思い出に思い違いやお小言があれば、誰か指摘して下さいね。・・・冬の星座のように確かにみんなで見たはずのずーっと遠くの光り輝くあの正座。・・・今回の語呂合わせはあんまりうまくないなぁ。反省。反省。

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