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2010年12月21日火曜日

ゴトン、ゴトン・・・ゴトン、ゴトン・・・

今頃のシーズンになると思いだす光景がある。

新宿発の小田急線・・たぶん夜、遅い時間の下りの各駅停車・・俺は、下北沢で乗った。
多少混んでた・・冬場の遅い電車には、いつもの光景・・カップル  よっぱらい  勤め帰りのサラリーマン  パート帰りかな、ちょっと疲れたおばさん・・・

その車輌の端にいたカップルの男の方に酔っ払って紙袋を胸に抱えたサラリーマンふうの男が大きな声でからんでいた。
「---あのさぁーー日大知ってるかよ!--えー!だから日本大学だよ!---俺の母校ーー知ってんだろう日本大学!・・・」(意味のわからないからみ方だ)

・・・おとなしそうなカップルは、泣きそうなくらい迷惑そう。「知らないですよ!・・・関係ないですから!。」
(明らかによっぱらいへの対応を間違ってる。落研の同輩の松時(ショータイム)君あたりなら、こんなときは"そーですよねぇ先輩!・・日大・・いい大学ですよね。日本大学ですもんねぇ・・・かなんか言いながら、調子よく抱き合って握手でもして、隣の車輌に手を振って離れてく・・・ぐらいにやり過ごすだろう。)
周りの客も大きな声が迷惑で不快・不快・爆発しそうだ。

どこかの駅で停まって急行通過待ちかドアが開いた。
まだ、からんでた。
「--だからよぉ・・一緒に歌えってんだよ!日大の校歌よぉ!・・」

ドカッ!と何かを蹴る音がして、酔っ払いのサラリーマンが開いたドアから駅のホームに胸から突っ込んで倒れた。見ると少し離れたところにいた若い兄ちゃんが、走ってきてサラリーマンの背中にとび蹴りをくらわせたようだ。
若い兄ちゃんが、電車の中で仁王立ちしながら、ホームに転がってるサラリーマンに向かって叫ぶ。「うるせぇんだよ!日大、日大って・・俺は高卒だ!」

そんとき、俺はホームに転がったサラリーマンの抱えていた紙袋から飛び出したものが、目に入ったんだ。赤と白のサンタクロースの格好をした子供用の人形だった。・・・パチンコの景品か街頭のワゴンセールか何かで買ったのか、むき出しで転がってた。・・・子供さんへのお土産か・・

駅員が飛んでくる。(仁王立ちの若い兄ちゃんと転がってるサラリーマンを見比べながら・・)
「どうしました?」
側にいた、おばちゃんが若い兄ちゃんを指差しながら叫ぶ。
「この人は悪くないんです!・・・悪いのはこの人!(サラリーマンを指差す)

そのとき、倒れていたサラリーマンが、よろよろと起き上がったんだ・・振向きながら小さな声で言った。「----俺は・・俺は・・日大だぞ・・」
その後は、駅員に促されてホームを向こうに歩いていったサラリーマンとドアが閉まって動き出した電車・・・何事もなかったように・・・ゴトン、ゴトン・・ゴトン、ゴトン・・・

酔っ払いのサラリーマンのあの人には、大学時代の栄光の時代、戻れない夢の時代と、子供に安物の人形をお土産にする・・家庭とか生活とか・・いろんなものを背負い込んでるんだろうなぁ。
とび蹴りの兄ちゃんも誰も悪くないけど・・・なんか苦い・・・よくある出来事なんだろうけど、忘れられずに憶えてる光景。もう30年近くまえのこと・・よくあるどうでもいい話。

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