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2012年4月22日日曜日

「なんてこったい首がない」・・・と「黄金餅」

最初は警察からの電話
「・・・・・えーっ、そちらの管内の河川敷で発見された頭部の無い遺体の引取りの件なんですが・・・・」

4月から入った新人さんが警察からの電話を受けて「ど・どぅしたら・・いいんでしょ・・?」・・てな顔でこっちに救いを求めるから・・・訳わからんけど・・・「電話こっちまわしてみぃ・・・」と受けた電話の内容がそれだもん。

よーく、話を聞くと・・・以前に近くの川原で首の無い白骨化した遺体が発見されて・・検視とか解剖とか、同時期の行方不明者とのDNA鑑定とか終わったんで、事件性ないし・・・そっちで遺体を引き取ってね。という電話でありました。・・・・・・軽いタッチで説明したけど・・ほんとにびっくりしたぜ・・・茨城弁で「あっぱ・とっぱ」したな。

これから、お願いできる葬儀社捜して・・・役場で警察で貰った検案書みたいなの付けて火葬許可書出してもらって・・・ここで身元不明の遺体が発見されましたよ、性別・年齢・身長・所持品・・・こんなんですよ心当たりないですかって、官報に告示して・・・60日ぐらい何もないと・・・無縁仏。

これで、費用15万円ぐらいかかるそうで・・その費用は、亡くなられた首の無い御本人がお金所持してなければ・・・・皆様の税金等により支払われることになります。

で、思い出したのが「黄金餅」という噺。
溜め込んだ、一分銀、二分銀を餅にくるんで飲み込んで死んだ坊主の西念。この腹からその金を取り出すには、焼き場で骨揚げのときにさらってくるしかないと考えた金山寺味噌売りの金兵衛さんの噺・・・・・古今亭志ん生の録音と立川談志の高座で観てる(今日は敬称略)

よーく考えてみれば、悲惨な陰湿な噺なんだけど、明るいんだよね・・・どう、考えたって不道徳で、・・・「この金を元手に、目黒で餅屋をやって大そう繁盛をしたという、黄金餅、由来の一席でございます。」・・・・・商売繁盛、おめでたい・・・って噺にしちまうんだぜ。
落語には、善人しか出てまいりません。・・・嘘つけ!

落語は、すごい。
現実は、・・・・・・明日、その身元不明の・・・「行旅死亡人」さんの火葬に行って来ます。
「金魚~ぉ・・・金魚~ぉ・・・みぃ金魚~ぉ」は、さすがにやれねえや・・・・
たぶん、自殺だろうけど・・川原で死ななければならなかった理由は・・・・・誰も知らない。・・・知ろうともしない。・・いいのかよそれで・・首のない人。
水戸の桜

2012年4月15日日曜日

首と胴体と「豆屋」

落語でさぁ・・・「胴斬りにされた男が、上と下別々に奉公した」っていう小噺あるでしょう。「首提灯」なんて噺の枕に使うの。

上の胴体が湯屋の番台で仕事して・・・下の方が向こう鉢巻して・・・じゃないふんどしして蒟蒻屋で蒟蒻踏んでる・・・・上の胴体の下の胴体への言伝が・・・肩がこるから足の三里に灸を据えてくれ・・・下の胴体から上の胴体の伝言が・・・・・(下の胴体ってどこでしゃべるんだ?)・・・・あんまり女湯を眺めねえでくれって・・・・・ふんどしの傷みが激しくっていけねぇ。

このあいだ、森まゆみさんの本読んで「累ヶ淵」の舞台を見たくて常総市、羽生とか訪ねたついでに板東市まで足を伸ばして平将門の墓をお参りしてきた・・・・この人は、平安時代に関東6国を支配して新皇を名乗ったりしたもんだから、朝廷から追討の命が出てあわれ38歳で亡くなったんだそうだけど、この人が亡くなった旧猿島郡岩井市に胴体を葬った「胴塚」があるんだ。

で、首は京都に送られてさらし首になったんだけど、ある日この首がポーンと飛んで落ちたところが今の東京都千代田区大手町あたり・・・ここには、「首塚」がある。森まゆみさんは、パワースポットで行ったら体がビリビリしたって書いてた。何も別々に葬らなくても・・・俺、こっちも行ったんだけど、ビリビリはしなかったけど、ビルの谷間の不思議な空間だった・・・しかも、どしゃ降りの雨が降って風も強いビル風で・・・ちょっと怖かった。・・
で、この将門さん生前パワフルな人だったから亡くなってもパワフル・・・・たたりがあっちゃいけないってんで建てたのが神田明神・・・・胴塚がある板東市の地名も神田山(かどやま)と言うそうな・・・


雨の首塚

よく晴れた日の胴塚
そんでもって、「豆屋」
伝助さんが、ブログで豆屋が応対する、こわもての二人の登場人物の描き分けが難しかったと書いてらしたけど、私もたしか・・2年の冬合宿に桂文治さんのテープで憶えて持ってってます。

宿に着いた日の夜の発表会の出番になって・・・・合宿中に多少なりとも稽古してひとり目の怖い客と二人目の怖い客にメリハリ着けて・・・・なんて考えてたので・・・もう間に合わず・・・・・・・・・でも何とかしたくて・・・・・・発表会の前に着物着替える前に、字のうまい牛丼君に左腕にマジックで「入れ墨」と、右腕には「ものすごい入れ墨」と書いてもらって・・・・・・・・自分の発表の高座で、「おう!豆屋!」と最初に呼び入れる人のときに左腕をまくって「入れ墨」を見せて・・・・・・二人目、もっと怖い人が「豆屋!!」と呼ぶときには、右腕をまくって「ものすごい入れ墨」を出す。・・・・そんな人物の描き分けをした思い出があります。・・・・思い出しました。仲間内の発表会では受けたけど・・・・・
他でやっていいという許可は先輩方からは、頂けず・・・・・・・

結局、その夜の発表会以外では・・・・・1,2回しか人前でやらなかった・・・と、記憶しています。
自分のアイデアには、満足したけど・・・・・素人のやることだからさ、難しかったけどいい思い出です。



2012年4月10日火曜日

夜のタクシーと「文七元結」と桜満開

日もとっぷりと暮れた、車と猪ぐらいしか通らない郷境の山道にタクシーが1台止まっている。
東京のナンバーのタクシーが、もう3日も停まっていれば、いくら田舎の山道でも通りがかりの地元の人の目にとまる・・・・ましてや、運転席に人が乗っていればなおのこと・・・

通報をうけた地元警察の方と日の暮れた、山道の現地近くで待ち合わせた・・・場所は、公園墓地・・あんまり気持ちのいい待ち合わせ場所ではない。

少し行くと・・確かにタクシーが1台・・・・「今晩は」・・・声をかけで運転手に話を聞く。
事前に地元の駐在のおまわりさんが接触して本人から話を聞いていたので・・確認。
死にたいのだそうだ・・・借金もあり、アパートの家賃も滞納して東京でのタクシー生活もみんないやになったので・・・・あちこち放浪して・・・ここまで来たが・・・・所持金もつき・・・・タクシーの燃料もほとんど残っておらず・・・3日何も食べてない・・・このまま餓死したい・・・ほっといて欲しい。とのこと。

おまわりさんが、コンビニで買ってきたおにぎりや俺達が持ってったジュースも受け取らない・・・
押し問答になる・・・・警察官の言うことは・・・何とか聞いてくれたが・・タクシーってやつはガソリンじゃなくてLPG・・液化天然ガス?・・なんたら言うものを燃料とするそうで・・・・そんなスタンドはこんな山道の近辺にない・・・あっても夜遅くて閉まってる・・・・第一・・・本人お金持ってないし。

本人は、このままタクシーにいる・・あんたらは、帰ってくれと・・・
俺は、それでもいいと思った・・今晩はタクシーにいてもらって明日燃料は何とかすれば・・・と・・・
警察は、それは駄目だと言う・・・・「死ぬ。と言ってる人をここに置いとくわけには・・・・」

再度、押し問答のすえ、警察官の説得により・・・車を離れ・・・とりあえず・・警察署まで行くことになった。・・・・・警察署で話を聞き、説得し、死んだりしないと約束させ・・・で、警察署に泊めてもらえるんでしょ?・・・・・警察署には泊めることは出来ません・・・・(俺達)へっ!?・・・・・じゃぁ、どうすんのよ・・・ここからは、あなた方、福祉のしごとでしょう・・・(俺達)信じられん。

病人でもない。生活保護でもない。・・・ただ死にたかった。と言ってるだけの人を(今は死なないと約束した人を)・・・今日、今すぐ何とかする制度なんて福祉の方でもねえぜ。
お金、出どころがないぜ。

こんな時、思い出しちまうのが「文七元結」・・・落語だ。吾妻橋のたもとで集金したお店の大事な50両、すりに盗られたと思い込んで身投げしようとした文七に・・橋の上で出会ってしまった左官の長兵衛さん・・・返せなければ娘が吉原に身をしずめることになるのを条件に借りた50両がふところに・・・・・そんなお金見ず知らずの若者にあげるか・・・そんなおせっかいありか・・・

思い出しちまったんだからしょうがない・・・あちこち電話をかけ、格安の宿、素泊まり4000円ちょっとの宿に、夜なのに頼み込んで・・・連れてって・・・くそっ・・俺の自腹で・・・・泊めて、宿代にちょっとだけ上乗せして朝食だけ付けてもらって・・・・次の日、朝迎えに行って・・・生活保護の話もしたけど、親族に連絡したりして、タクシー燃料満タンにしてあげて・・・東京へ返した。

大事な50両とは比べようもないけど・・・俺の自腹は返ってこないよなぁ・・・
他に方法あったかなぁ、常習犯かなぁ・・・でも、あのおじさんどっかで再出発してくれるといいな。

皇居、千鳥が淵周辺の桜を見てきた