暮れから正月の忙しさの中で、若い行員さんに指示をしてると、どうしても声が大きくなる。
「~だから~ぁ、この伝票をすぐに入れて、こっちを出して・・・・入れてだして。入れて出して。くれればいいのよ!急いでやって、入れて出して・・・入れて出して・・・・」みんなにクスクス笑われたとのこと、私は、この人の天然なところが大好きだ。
今年の最初の落語は、1月12日、水戸芸術館での「春風亭昇太独演会」
「正月は、寄席の掛け持ちで頭ボーっとしてたので、家で料理してたら、なぜか熱くなった五徳をつかんでしまった。ジュッという音がした・・・・・・・・・」と、客席に指を見せていた。
私もその話を聞きながら、自分の左手をじっと見る。・・・・・親指と人差し指の第2関節あたりに、絆創膏が貼ってある。・・・・・仕事場の冷蔵庫のステンレス製のすのこが一部はがれたので、ステンレス用の「はんだ」ではんだづけしようとして、ボーっとした頭ではんだこていじってたので、熱くなったこてを握ってしまっていたのだ、・・・・・・ジュッという音がした。
この年代は、正月からやることは、似たようなものなのね。
携帯を切ってね。マナーモードもやめてください。マナーモードにするくらいなら、鳴らしてください。との注意の後、この後出てくる「桂宮治さん」の時には、携帯かけ放題、おしゃべりし放題ですから・・・・・私、この後しゃべりたいことがいっぱいあるので・・・・・と、袖に引っ込む。
で、続いて、桂宮治・・・・「棒鱈」
落語芸術協会、売出し中の二つ目さん、NHKかなんかの演芸大賞とった人だよね。
爆笑系の人なんだろう明るくて元気だ。途中の唄、「モズのくちばし」とか「十二か月」とかほかの噺家さんに比べると誇張がオーバー・・・・笑わせたいんだろうな・・・・・もう少し、のんびり聞かせても、おかしな唄ではあると思うんだけど・・・・・・いつも、思うんだ・・・・・下げの「仲裁にはおよばねえ・・・こしょう(胡椒)が入った。」ってのがよくわからん。・・・・・・「鱈もどき」って言う胡椒を使う料理もわからねえ。一度食べてみたいもんだ。どこ行けば食べられるものやら・・・・・
元気よく、客を笑わせて・・・引っ込んだ後は
春風亭昇太・・・・・・・・「鷺取り」
まくらで、NHKの大河ドラマに出た話とか、1月から始まった方の大河ドラマにも4話目に出る・・・そんな話でだいぶ時間を消化。
昔、この噺を亡くなった桂枝雀さんで聞いた時には、衝撃的だったもんな・・・・・上方落語すげーっって思ったもん。桂枝雀さんのこの噺と「壺算」は、ほんとに笑った。
上方の天王寺さんの五重塔につかまるところは、浅草の五重塔にしてある。
枝雀さんの方だと、「天王寺さんに変が起こった。・・・・・何事ですか?・・・・・・・天王寺さんの池に大きな青いカメが出現して暴れてるでーっ!どないしよう?・・・・・・・青いカメには、とろろがいいぞ!・・・・なんじゃそりゃ?・・・・・・・・ですから・・♪あ~あーあ、青カメのぉ~怖いーぃとろろーぉ(あこがれのハワイ航路の節で)・・・・・なんですーぅ?・・・・・・・は。にわかじゃ、にわかじゃ。
なんて言うのを入れてあった。・・・・・・・昇太さんのは、そんなのは入れてない。だいぶ刈り込んでシンプルにしてある。
下げは、坊さんの宿坊の布団の四隅をもって待ってるところへ、飛び降りたんで坊さんの頭がゴツ・ゴツ・ゴツ・・・・・・・・・で一人助かって四人死んだ。・・・・・っていう普通の下げ
で、そのまま頭を下げて・・・・立ち上がると、いつもの生着替え・・・・BGMにのって着物を着換えると、袖に脱いだ着物と羽織を投げ飛ばして・・・・二席目に
・・・・・・・・「ストレスの海」
だいぶ、初期の新作だよね。ありえない夫婦の設定も力技で押し切って・・・・・
「・・・・・・・・・・ご主人が亡くなられた原因は?・・・・・・ストレスです。」・・・・・
ご自分も言ってたけど、正月早々・・・・五人目死亡。
--------------- 仲入り ----------
で、三席目は、・・・・・「壺算」
やっぱり、人情噺とかやらない爆笑志向の噺家さんは、こうゆうの選ぶんだはね。
こっちも、壺が割れた理由のくだりとか、「・・・・・縞柄がぼやけてる・・・・紋が違うとる・・」とか、「足元を見られんように・・・・・」あたりは省いてる。一席目のまくらで、大河ドラマの話をしすぎて、持ち時間が無くなったといってた。だいぶシンプル、ショートバージョン。
でも、壺を買いに行かされる弟分のキャラクターの造型が、すごいことになってる。あぶない人だ「こいつをそっちにむけるぞ。・・・いやなら、壺の代金をまけろ!・・・・・」
水戸芸術館ホールは、ステージに緞帳とか幕がないので、演者が頭を下げた後のエンディングが閉まらない。・・・・・エンディングトークみたいな形でちょっとしゃっべってから、袖に退場という形になる。客席も狭い割にオペラ劇場みたいに3回までズドーンと客席がある。やり辛くはないのかな・・・
落語芸術協会理事・・・・国民的テレビ番組・・・「笑点」レギュラー・・・・五十代になって、・・・・でも、この人は、ずっとこんなバカな噺をやり続けていくんだろうな・・・・
昔、立川談志さんが落語「源平盛衰記」のまくらで、「(誰だかに、)義経の苦悩も、清盛の悲しみも何にも出てない…と言われて、一時期(この噺をやるのを)止めちまってたんだけど・・・・それでもいいんじゃねーかと思ってまた最近やりだした・・・・・」と言ってたのを聞いたけど。
・・・・そーなんだ、春風亭昇太さんも、自分の噺がおかしければそれでいいんだろうな、客が笑ってくれることしか目指してないんだろうな・・・・落語の違う側面、昇太さんの人情噺も聞いてみたい気はするけど、そういう風に・・・・ならねえでほしい気もするんだよね・・・・・
おまけ①
伝助さんが追ん出し寄席についてブログに書いてらっしゃたので、参考画像再度アップ |
ご存命の頃の三笑亭夢楽師匠をお迎えしての専大寄席 |